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笠原一輝のWindows Vistaβ版レポート
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Windows Vistaのすべてに迫る

Longhornという開発コードネームの時から次世代Windowsとして注目を集めてきたのが、Windows Vistaだ。2001年に登場したWindows XPから実に5年を経て来年の1月に登場する予定となっているWindows Vista、数々の新しい機能を搭載していることもあり、ユーザーからも熱く注目されている存在だ。本記事では、Windows Vistaの最新版β2を利用して、Windows Vistaとはどんなものなのかを3回にわたって紹介していきたい。


Windows Vista日本語版の起動画面。現在βテスターに配布されているのは、β2となるビルド5384

WinFXと呼ばれる新しいプログラミングアーキテクチャを採用したWindows Vista
Windows Vistaは、もちろんWindows XPの後継となるOSではあるが、マイクロソフトが新世代のOSとなるべく、新しいアーキテクチャを採用して作られた最新OSとなっている。そのOSがどのように新しいかは、開発者に提供されているプログラムモデルを見てみるのが最も速い理解への道だ。

マイクロソフトはWindows Vistaにおいて、WinFXと呼ばれるプログラミングモデルを採用している。WinFXには大きくいって3つのコンポーネントが用意されている。それが開発コードネーム"Avalon"(アバロン)で呼ばれていたWindows Presentation Foundation(WPF)、WinFS(Windows File System)、開発コードネーム"Indigo"(インディゴ)で呼ばれていたWindows Communication Foundation(WCF)だ。

WPFはアプリケーションがより高度なユーザーインターフェイスやよりリッチなコンテンツなどを扱えるようにするためのプログラムインターフェイスだ。具体的には、ボタンやウインドウなどのすべての描画がこの新しいWPFのAPIを利用して行われることになる。WPFの最大の特徴は、その描画が従来のWindowsのような2Dエンジンではなく、3Dエンジンを利用して行われることだ。このため、従来のWindowsに比べてよりリッチな画面表示などが可能になる。

Indigoこと、Windows Communication Foundation(WCF)はネットワーク周りの拡張で、従来はアプリケーションがそれぞれ独自に拡張していたネットワークサービスなどがOS側に実装されることになる。例えば、WCFでは標準でP2P(Peer To Peer)サービスが搭載されており、アプリケーションの開発者はこのP2Pサービスのポートを利用することで簡単にアプリケーションにP2Pの機能を取り込むことができる。

Windows Vistaのプログラミングモデル。
カーネルなどのベースとなるOSサービスの上に、WPF、WinFS、WCFなどが乗っている形となっている。
こうしたアーキテクチャをWinFXと総称している。


ファイルシステムの概念を大きく変える斬新なWinFS
WinFSは、一言で言ってしまえば新しいファイルシステムなのだが、従来のFATやNTFSなどの概念では語りきれない新しい形のファイルシステムだ。そこには、マイクロソフトのSQLサーバーをベースにしたデータベースも融合されており、ファイルに含まれている様々な形のデータを高速に検索することが可能になる。現在のWindowsではファイル+フォルダという形でファイルの認識が行われているが、WinFSではアイテムとアソシエーション(集合体)という形でデータの認識が行われ、1つのデータがメールでもあったり、メディアファイルであったりと様々な形をしている。それらのデータに対して、WinFSが提供する強力な検索機能を利用することで、ユーザーは目的のデータをより自然な形で扱うことができるようになる。

WinFSの最大のメリットは、データベースを含めて統合することで、すべてのアプリケーションに対してローカル検索の機能を実装できるようになったり、検索の速度が高速になることだ。現在マイクロソフトは"Windowsデスクトップ検索"という名前で、PC内部やローカルネットワークを検索してファイルを探し出すソフトウェアを提供している。現在この機能は、アプリケーションから独立して1つのアプリケーションとして動作しているが、これがアプリケーションに統合されてより高速化されるというイメージだと言えばわかりやすいだろうか。

WinFSにより、アプリケーションからファイルを開くときに、これまでのようにファイルをフォルダから探していくのではなく、何かのキーワードを入れるとそれに関連するファイルが一覧表示され、そこから目的のファイルを開くといった使い方が可能になる。

ちなみに、マイクロソフトにとって、このWinFSは"Google"への対抗策という意味があると筆者は考えている。現在マイクロソフトはGoogleと検索エンジンを巡って激しい争いを続けているが、Googleが提供する"Google Desktop"の機能をWinFSは包含するものだ(かつ、GoogleにはできないOSへの統合を行っている)。

このあたりが、90年代後半に激しい論争となったInternet Explorer vs Netscapeのような議論に発展するのかは、今のところわからないが、少なくともWinFSがGoogle vs マイクロソフトの"競争の行方"に大きな影響を与えることは間違いないだろう。

現在のファイルシステムとWinFSとの違い


いくつかの機能はWindows Vistaのリリース後に登場することになる
Windows Vistaの開発の歴史を振り返ってみると、2003年のPDCで公開された最初の構想から比べると、1月にリリースされるバージョンでは若干機能のいくつかが削られている。

その代表例が、WinFSだ。すでに述べたように、WinFSはデータベースまでを統合し、これまでのファイルシステムの概念では語りきれない斬新なアーキテクチャとなっている。その最大のメリットはローカルやネットワークにおける検索が、WinFSの導入によりアプリケーションレベルに統合されたり、より高速に行うことが可能になる。しかし、WinFSは、斬新だっただけに開発に時間がかかっており、来年の1月にリリースされる予定のWindows Vistaの最初のバージョンでは省かされているのだ。

現在WinFSはβ1テストがWindows XP ServicePack2上で行われており、今年中にはWindows Vistaで動作するβ2が提供される予定となっている。さらにβ3や製品版はWindows Vistaの出荷後が予定されており、実際に利用することができるのは来年中ということになりそうだ。おそらくServicePackなどの形でユーザーに提供されることになるだろう。

また、NGSCB(Next-Generation Secure Computing Base)は、カーネルレベルでデータ保護の仕組みを実装するアーキテクチャで、ハードウェア同士がセキュアにデータをやりとりすることが可能になる。しかし、このNGSCBも最初のバージョンのWindows Vistaには入っていない。入っていないどころか、最近ではマイクロソフトはNGSCBに関して積極的に語ろうとはしていないのだ。実際、2005年に行われた2つの開発者向けイベントであるWinHECとPDCではNGSCBに関して説明するセッションはほとんどなかった。

NGSCBに関しては、カーネルレベルで手を入れる必要があるコンポーネントであり、WinFSのようにOSのリリース後にアップデートするという訳にはいかない機能だ。そうしたことから考えても、NGSCBに関しては、Windows Vista後のOSの課題となるだろう。

WPFでは、画面の描画を3Dエンジンでのみ行う


ユーザーに新しい利用環境を提案する"Avalon"
こうした機能のいくつかが省かれたことをもって、"Windows Vistaは完全じゃない"という人も少なくはないが、筆者はそうは思わない。そもそも"完全なソフトウェア"なんてものはこの世に存在しないのであって、常に"理想のソフトウェア"を追い求めるのであれば、それは"バージョンアップ"を繰り返すしかないのだ。実際、WinFSはWindows Vistaのリリース後に何らかの形でユーザーに提供されることになる。

ユーザーにとって、Windows Vistaで目に見える形でのメリットは、"Avalon"ことWindows Presentation Foundation(WPF)だろう。現在のWindows XPでは、GDIと呼ばれる2DエンジンをもとにWindows画面の描画を行っている。このGDIの仕組みは、基本的にはWindows 95の時代からほとんど同じ仕組みになっており、これまで大きな変更は加えられてこなかった。基本的には線画と同じ仕組みで描画が行われており、さほど表現力が高いものでは無かったのだ。GDIは、PCで画面描画を担当しているGPU(Graphics Processing Unit)のうち、2Dエンジンを利用して画面描画を行っている。

現代のGPUでは、そのトランジスタのうちほとんどを3Dエンジンに費やしており、2Dエンジンに費やされている分はかなり少ない。つまり、PCにある2つの大きな演算器(CPUとGPU)のうち、1つはほとんど使われていなかったのだ。そこで、これを利用しようという試みがWPFなのだ。WPFでは、画面描画をこれまで3Dゲームなどのみに利用されてきたDirect3DのAPIを利用して行う。つまり、GPUの内部的には3Dエンジンのみを利用して描画するため、GPUの本来の性能を活用できる。

従来通りGDIを利用した描画も不可能ではないが、今後は基本的にはDirect3Dを利用してすべての描画が行われるようになるのだ。


デスクトップを美しくするAero Glass
WPFのもっともわかりやすい例が、Windows Vistaに実装される3DデスクトップのAero Glass(エアログラス)だ。

Windows Vistaでは、新しくWindows Areo(ウインドウズエアロ)と呼ばれるユーザーインターフェイスが導入される。Windows XPでは、Luna(ルーナ)と呼ばれるユーザーインターフェイスが導入されたが、それに変わる新しいユーザーインターフェイスだと考えるとよい。その具体的な例としては、スタートボタンが四角から丸に変わった点などが上げられる。そのほかにも、スタートメニューに登録されたプログラムの一覧が、従来のXPのようにスタートメニューからはみ出て表示されるのではなく、スタートメニューの中に表示されるようになったり、ウインドウのコントロールボタン(右上に表示されるラジオボタンなど)のデザインも変更されるなど、いくつかの点でLunaとは異なっている。

そうしたWindows Aeroのユーザーインターフェイスに3D描画の機能を追加したのがAero Glassだ。Aero Glassを有効にするには、コントロールパネルの視覚デザインの項目を「Windows Vista Aero」と呼ばれる設定に変更するだけでよい。

最大の特徴は、3D描画性能を生かしたウインドウの透過表示などが行われることだ。ウインドウのメニューバーなどが透過表示になり背景の壁紙などが透けて表示されるのだ。さらに、右上のウインドウを操作するラジオボタンもポインターを上に重ねると赤く光るような表示になる。また、タスクバーの上のアイコンにポインターを持って行くと、実行中のアプリケーションがサムネールで表示される他、Alt+Tabで表示されるタスクスイッチに関してもサムネイルで表示される。もっとも特徴的な機能は、Windowsキー+Tabで表示されるFlip 3Dと呼ばれる3Dによるタスクスイッチ画面だろう。何か新しいことができる訳ではないが、みていて楽しいのは間違いない。

このほかにも、動画を再生している状態でウインドウを振り回すと、Windows XPやAero Glassオフの状態ではゴミが表示されるのに対して、Aero Glassがオンの状態ではそうしたゴミは表示されないなど、表示品質の向上という観点でもAero Glassは大きな意味を持っている。

このWPF、今のところはAero Glassぐらいにしかりようされていないが、今後は他のアプリケーションでも利用できるようになる可能性が高い。たとえば、アプリケーションの内部で3Dのオブジェクトを回転させてみたりといったことが、これまでよりも簡単に実装することができる。

Aero Glassを設定する画面。Windows Vista Aeroを選択するとAero Glassが有効に、Windows Vista Basicを採用するとAero Glassはオフになる

Aero Glassをオフにした画面。標準と比べると味気ない画面になっている

Aero Glassをオフにしてビデオを再生し振り回してみると、このように画面のゴミがでる

Aero Glassではビデオを再生して振り回してもきちんと表示される。このように3Dエンジンを利用することで、表示品質も上がっている

Windowsのスタートメニューは丸くなり、かつ登録したアプリケーションもスタートメニューからはみ出すことはなくなった

ウインドウのラジオボタンにポインターをあわせると光るなど細かな工夫も(ウインドウ部分をアップで)

Flip3Dの画面。Windowsキー+Tabで表示される、3D表示されるタスクスイッチャー

タスクバーにポインターをあわせると実行中のアプリケーションのサムネイルが表示される


Aero Glassに備えるのであれば高スペックのGPUを用意したい
Aero Glassを利用するには、最低でもDirectX9のハードウェアを持ったGPUがシステムに存在していることが前提になる。具体的には以下のハードウェアが必要だ。

ATI RADEON 9600以降のGPUおよびRS4xx以降の統合型GPU

Intel Intel 945G以降の統合型チップセット

NVIDIA GeForce 6以降のGPUおよび統合型GPU

ここに該当するGPUであっても、ビデオメモリの容量にも制限がある。具体的にはピクセル数で決まってくる。
786,432以下のピクセル 64MB以上
786,432以上1,920,000以下のピクセル 128MB以上
1,920,000以上のピクセル 256MB以上

ピクセル数とは、解像度によって決まってくる。たとえばXGAだったら1024x768ドットだから786,432ピクセルとなる。つまりXGA以下の解像度なら64MBのビデオメモリでOKで、UXGA(1600x1200、1,920,000)以上の解像度で利用する場合には256MBのビデオメモリが必要になるということになる。なお、これはシングルモニター時の制限で、デュアルモニターで利用する場合にはさらに厳しい条件となる。

また、ビデオメモリだけでなく、ビデオメモリの帯域幅にも条件がある。具体的にはWinSATと呼ばれるWindows Vista標準のベンチマークプログラムで1280x1024ドットの解像度においてビデオメモリの帯域が1800MB/秒を超えている必要がある(WinSATに関しては別途今後の記事でふれていきたい)。

このように、GPUに関してはかなり厳しい要件が必要とされており、今後Vistaに向けたPCを作りたいと考えるのであれば、GPUに関してはできるだけ性能の高いものを選んでおいた方がいいだろう。

第2回「Windows Vista RC1 を導入してみよう」を読む
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